>>593
(続き)

しない自由だってある

 ――芥川賞を受けた「コンビニ人間」は恋愛経験のない36歳の女性が主人公でした。

「作品を書き終えて、性経験のない人の苦しさを聞く機会がありました。20代前半の
女性で、自分はきっとブスでモテないから一生誰にもセックスしてもらえないんだと
言う。『してもらう』という感覚がとても苦しいし、しんどいと思いました。しない
自由もあるし、しなくても問題ない。子どもが欲しいだけなら精子バンクを使って
産むことも可能ですよね。セックスは人生の必修科目のように言われていますが、
そうでしょうか」

 ――これから出る『地球星人』では主人公が性的な接触を持たない条件で合致した
 男性を選びます。恋愛しない人物を描くのはなぜですか。

「私の理想なのかもしれません。不妊ではないけど性的なことをしたくないから
人工授精をするというカップルの話を聞きます。私たちは本当はもう違う場所に
いるのに、制度が追いついていないんじゃないか。それで、制度も技術も全部
追いついちゃった世界はどうなんだろうと思って書いたのが『消滅世界』でした」

(続く)