12月14日(金)朝日新聞東京版朝刊社会面 ”「沖縄」を考える 土砂投入を前に”

大学生の映画監督 仲村颯梧さん(22)   僕らの世代 割り切れない

米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)返還で日米が合意した1996年に生まれました。
「一日も早い危険除去を」と言われますが、僕は22歳になりました。

きょう辺野古の海に土砂が投入されるとニュースで見ましたが、海に囲まれて育った
者としては悲しい。地域の活性化や抑止力の維持が大切とも聞く。戦争につながる
ものを拒みたいという祖父母らの思いもある。でも米兵の友人もいて、基地すべてを
なくしてほしいとは思っていない。

沖縄戦も、米軍統治もしたない僕らの世代の多くは、単純には割り切れない思いを
抱えています。

それなのにニュースで伝えられるのは「沖縄は基地に賛成か反対か」ばかり。お前は
どっちなんだ、と問いただされているような息苦しさがあります。ありのままの沖縄を
伝えたくて製作したのが映画「人魚に会える日。」です。基地建設に翻弄される架空の
「辺野座」を舞台に、高校生の揺れる心をファンタジーに仕立てた作品でした。

でも公開前からSNSに書き込まれたのは「売国奴」「反日」。逆に「辺野古賛成の
映画を上映するのか」と批判も寄せられました。同世代のスタッフは、米軍関係で働く
家族の意向でエンドロールを仮名にせざるを得ませんでした。

9月に初めて知事選で投票しました。4年前は基地や経済は大人の問題でしたが、
今回は各陣営で支援を呼びかける友人も多く、議論を深める機会となりました。
その結果、辺野古ノーの知事が誕生したのです。

辺野古の是非を問われた時「わからない」と恐れずにまず言ってみる。そうした
立場から一歩進んで、答えを探すスタート地点に立ったように僕は思っています。
その矢先の土砂投入。知事選からわずか2カ月余りです。早すぎませんか。