>>810
(続き)

私がもっとも残念に思うのは、今日、国会で論じるべき重要テーマはいくらでもある
のに、そのことからわれわれの目がそらされてしまうことなのである。トランプ氏の
保護主義への対応、アベノミクスの成果(黒田東彦日銀総裁による超金融緩和の継続、
財務拡張路線など)、朝鮮半島をめぐる問題、米朝首脳会談と日本の立場、TPP等々。

私は安倍首相の政策を必ずしも支持しないが、それでもこうした問題について安倍首相
は、ひとつの方向性を打ち出しており、そこには論じるべき重要な論点がある。問題
は、野党が、全く対案を打ち出せない点にこそある。だから結果として「安倍一強」に
なっているのだ。

日本社会は(そしておそらくは世界も)今日、大きな岐路にたたされていると私は思う。
麻生太郎財務大臣が「森友学園問題はTPP問題よりも大事なのか」といって物議を
かもしたが、当事者の発言としては不適切だとしても、当事者でないメディアが述べる
のはもんだいないであろう。財務省の文書改ざんの「真相解明」はそれでよいと
しても、それ一色になって、重要な政策論が見えなくなるのは残念である。安倍首相の
打ち出す方向に対する代替的なビジョンを示して政策論を戦わせるのもまた、いや
その方が大新聞やメディアに課された役割であろう。

(終り)