(>>75の続き)

もう一つ。直虎から「われは種子島を備えて(=軍備増強によって)井伊を守ろうと思うて
おった。(だが)、この先どうなるかも分らぬ。そなたが我なら……何を備える?」と
問われた、直虎と心を通わす家老で今川家目付役でもある小野政次の言葉。「私なら、
戦わぬ途を探ります」「戦いに及ばずとも済むよう死力を尽くす。周りの思惑や動きに
いやらしく目を配り、卑怯者、臆病者よとの誹りを受けようとも断固として戦いません」

戦わずに争いを解決するという政次の言葉は、同時に、卑怯者と呼ばれる覚悟、政略・
外交の技量の必要を強調することによって、戦争放棄を日々の政治過程における具体的
実践へと肉付けしている。国際平和を「誠実に希求」(9条1項)するとは、こうした
実践の積み重ねとしてのみである。

  (続く)