3月15日(木)朝日新聞東京版朝刊オピニオン面・記者有論

社会部 木村司   沖縄・名護市長選   「反基地」いびつな閉塞感

米軍基地問題ばかりが取り上げられることへの嫌悪感が、賛否に関係なく、若者たちに
広がっていた。那覇総局時代も含め、私にとって3度目となる沖縄・名護市長選の取材
現場で感じた空気だ。

2月4日投開票の市長選は、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古沖への移設を
受け入れるかが焦点の一つで、反対する現職・稲嶺進氏(72)が、安倍政権が支えた
新顔の渡具知武豊氏(56)に敗れた。

公明が前回の自主投票から新顔推薦に回るなど、現職の敗因は複数あるだろう。ただ
3458票という大差は、若者の支持が大きく影響したのではないか。10〜20歳代
有権者(8366人)の渡具知氏支持の傾向は、出口調査で明確に出た。ある大学生の
話が印象深い。「親の倒産で学校に行けなくなった友だちがいた。それでも政治家は
基地問題ばかりを語り、何もしてくれなかった。貧困は基地問題のせいだと思ってきた」

新顔陣営は「閉塞感」をキーワードに「基地反対ばかりで街が寂れた」「争点は
くらしだ」と強調。若者の心をつかんだ。では、この閉塞感は稲嶺氏だけが原因
なのか。私はむしろ、安倍政権と、政権を支持してきた全国の世論にあると考える。

  (続く)