なくならない痴漢  被害を軽く見る社会環境

大阪大学大学院教授 牟田和恵さん

  (>>556の続き)

ただ、日本では恒常的に混雑した満員電車があり、痴漢の多くを刑法犯ではなく
迷惑防止条例違反で扱って矮小化してきた法律の不備もある。人権感覚に根付いた
性教育も不足しています。様々な要素が重なり、「痴漢が生きやすい社会」に
なっています。

痴漢というと必ず冤罪が問題にされますが、冤罪を理由に犯罪を放置してよいはずは
ありません。また、「冤罪話」が流通しやすいのには理由があります。実際に痴漢を
して捕まっても、周囲には「冤罪だった」と言い訳しがちです。そう信じたい家族や
友人も、これを信じて「冤罪話」として流通します。また、メディアは痴漢で無罪に
なると報じますが、有罪はほぼ報じません。これらが、痴漢をしない男性の
「間違われたら」という心理と絡まり、「冤罪に巻き込まれて社会生活が終わる」
という話が信じ込まれ、痴漢告発をさらに難しくしています。

ただ、「冤罪話」は古い情報に基づいた「都市伝説」に近い。警察は近年では、手に
ついた繊維片の調査や汗のDNA型鑑定などの科学的捜査を重視するようになって
います。警察や鉄道会社はこうした対応をアピールし、「冤罪話」が対策を遅らせて
いる現状を変えるよう努めて欲しいです。

  (以下略)