(>>390の続き)

取材の積み重ねは、PKOの前提だった停戦合意が事実上破綻し、再び内戦状態に突入
していたことも浮き彫りにしている。当時、UNTAC(国連カンボジア暫定統治機構)、
日本政府ともそれを認めず、派遣要員の撤収はないとの立場に終始した。PKOの矛盾
に満ちた舞台裏を明らかにした価値は大きい。

高田さん殺害はポル・ポト派の犯行の疑いが強いが「いまなお『犯人』は特定されて
いない」し、事件後の究明・検証もなかった。本書の「これまでのメディアの無為を
恥じた」との言葉は私にも重く響いた。

日本の悲願だった人的な国際貢献という旗印のもとに現地隊員が苦しみ、犠牲者まで
出した。今後、安保法制が新たな旗印になる場合、この事実を無視して先に進むことは
できないだろう。それを世に知らしめた、意義ある一冊だ。

  (終り)