しかし、実際の暮らしぶりに目を向けてみると、さにあらず。日常のゴミ出しさえままならない、暗澹たる現実が横たわっている。それは、「移住人気日本一」(NPO「ふるさと回帰支援センター」調べ)を誇る、山梨県とて例外ではない。

 まず、私が暮らす、山梨県北杜市の実態をご紹介しよう。

■20キロ先からゴミ運び

惨めで気の毒な「越境ゴミ捨て行」
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 11月初旬、標高1000メートル付近の八ヶ岳南麓の朝はすでに氷点下である。冠雪した駒ヶ岳を擁する南アルプスを一望する市の総合分庁舎の駐車場。
ここに、朝7時半を回った頃から、三々五々、四駆車や軽トラが続々と集まってくる。

 ドライバーの目的は山々を睥睨(へいげい)するためでは断じてない。ここは、他ならぬゴミ収集所なのだ。
地元集落のゴミ収集所に持ち込むことが“許されない”“認められない”移住者たちのための……。

 運転席から降りると、かじかむ手を擦りながら、後部座席やハッチバックのドアを開ける。積まれているのは、大量のゴミ袋。
その日は「燃えるゴミ」の収集日で、駐車場の端に特設された巨大なゴミ集積倉庫(上の写真)に、ゴミ出しに来るのだ。

 平成の大合併で、8町村が合併して誕生した北杜市は、県下最大の広さ。市境から市境までの最長部分はおよそ90キロにも達する。

 その広域さゆえに、10キロ、15キロ、場合によっては20キロ先からゴミを運んでくる者も少なくない。20キロとは、東京で言えば、
日本橋から調布の味の素スタジアムまでの距離である。ほとんどハーフマラソンだ。

 1カ月ほど前に神奈川は横浜から移住してきたという初老の男性に訊ねると……。

■「市は干渉できない」

「ネットで手ごろな中古物件があったんで、夏場のうちにと思って移住したんだけど、自治会に入ってないとゴミは出せないって聞いて、ここまで運んできてますよ。
どうも、自治会のほうが加入を認めないっていう話だったから。いちいち車にゴミを積んでガソリン使って、ゴミを捨てに何キロも走るっていうのはね、
産廃じゃないんだからね。それに、体力的にいつまでできるのか」
 一体どういうことなのか。http://2345.65