<京都府警科捜研>速く安く、犯人の年齢 唾液DNAで半日

5/20(日) 6:50配信 毎日新聞

殺人事件など犯罪現場に残された血液や唾液のDNAから、半日ほどの短時間で年齢を推定する手法を京都府警科学捜査研究所の浜野悠也専門研究員(31)が開発した。
現状で平均誤差は上下約6歳で、1回当たり数百円程度と低コストも特長。たばこの吸い殻に付いた唾液など少量でも判定できる。
初動捜査で犯人像を絞り込むことに役立ち、実用化が期待される。

 科捜研によると、DNAによる年齢推定は大学や研究機関で学術研究として行われてきた。
ただ、1回当たり数十万円で約1〜2週間かかるため、鑑定資料が多く、迅速さが求められる捜査の現場では使われていない。

DNAでは構造の一部に「メチル化」と呼ばれる化学的変化が起き、年齢によってDNAの特定箇所でメチル化率に違いがある。
浜野さんは、捜査でDNAが人か動物かを見分ける際に日常的に使う「融解分析」という技術を活用。
DNAの二重らせん構造を高温下で分離させ、簡便にメチル化率を測ることに成功した。
現時点では、推定年齢の誤差は若年で数歳、高齢では最大約20歳。調べるDNA上の箇所を現在の2カ所から増やすことで、さらに誤差を小さくできるという。

殺人や強盗、性犯罪などが起きた場合、犯人像の見立ては捜査方針に影響を与える。
浜野さんは「遺留物から年齢層を推定でき、冤罪(えんざい)防止にもつながる」と期待する。

浜野さんは広島県出身。
テレビドラマ「科捜研の女」などを見て警察の仕事に興味を持っていたといい、東京大大学院を修了後、2012年に京都府警に採用された。
科捜研では主にDNA型鑑定に携わる一方、13年から勤務時間外に京都大大学院・法医学講座に通って研究し、今回の手法を考案した。

研究は学界でも高く評価され、論文は英科学誌「サイエンティフィック・リポーツ」などに掲載。今年3月には京都大から医学博士号を授与された。
保護した野生動物の年齢を調べる共同研究の声も掛かったといい、浜野さんは「意図しない所で反響があり、うれしい。今後も科学の視点を警察で生かしたい」と意気込んだ。【中津川甫】