(>>876の続き)

パッケージの両輪は「人づくり革命」と「生産性革命」。いやはや、その名の下に行われる
政策の方向性に異論はなくとも、聞くと心がスース―する言葉だ、人づくり革命。

人間が製造ラインに載せられている感じが、どうしてもする。工場の壁には「この道しかない」
「一億総活躍」「国難突破」の標語が掲げられているわけで、首相がそこに「大胆に投資」する
というからには、私のような「不良品」はダイタンにハジかれるのであろうなあとおぼろに
不安を覚えて――おっと。大杉栄の「鎖工場」がただいま脳内に飛来した。自らを縛るための
鎖を造る工場の話だ。

「もうみんな、十重にも二十重にも、からだ中に鎖を巻きつけていて、はた目からは身動きも
できぬように思われるのだが、鎖を造ることとそれをからだに巻きつけることだけには、
手足も自由に動くようだ。せっせとやっている」そしてその脇では、多少風采のいいやつが
「鎖はわれわれを保護し、われわれを自由にする神聖なものである」と言い立て、「みんなは
感心したふうで聴いている」。

2兆円スゲー。タダはうれしい。なのになんか気持ち、アガんなくないですか? 脳内に
流れるBGMはなぜか「ドナドナ」。ある晴れた昼下がり、荷馬車がゴトゴトかわいい子牛は
売られてゆき――

さてお立ち合い。私たちは自由か。お金で自由を買われていないか。上からの「革命」は
果たして「われわれを保護」し「自由にする」だろうか。

  (続く)