12月8日(金)朝日新聞東京版夕刊映画面

奔放に濃密に正直に   「ルージュの手紙」に出演 カトリーヌ・ドヌーブ     (文・石飛徳樹)

インタビューの前夜、ドヌーブのトークイベントに顔を出した。最後に写真撮影の時間があったのだが、
彼女は「こんな夜遅くに撮影なんて!」と言い残してサッと引き揚げ、関係者を凍り付かせた。

フランスの大女優にはこうした厳しいタイプが少なくない。中でも彼女は別格だ。20歳で演じた
「シェルブールの雨傘」の可憐な女性を想像していると、大変な目に遭いそうだ。「ルージュの手紙」の
マルタン・プロボ監督も、彼女に会う前は「緊張のあまり神経がすり減った」という。

今回の作品には、彼女のこわもてのイメージが見事に生かされている。「私が演じたベアトリスは、
我が強くて後ろを振り返らない。そして人生が大好きなんです」。こんな答えからインタビューは
始まった。

生真面目な助産師クレール(カトリーヌ・フロ)の元に電話が入る。約30年前に姿を消した継母、
ベアトリスからだった。酒と賭博が好きで、奔放に生きる継母。久しぶりに再会した正反対の母娘は、
知らず知らずのうちに、互いに影響を受け始める。

「自分を良く見せるため、いつもきれいにマニキュアを塗り、髪もきっちり整えている。そんな女性を
想像して演じました」

  (続く)