12月6日(水)朝日新聞朝刊・天声人語

同じものなのに呼び名が違う例は少なくない。関東は「肉まん」だが、関西は「豚まん」。
関西では肉といえば牛肉を指すことが多いため、豚肉だと強調したらしい。
農耕用に馬より牛がよく飼われた歴史も背景にあるようだ。

『誤解されやすい放言小辞典』によると、
東西で名称が違うのは「かけうどん/素うどん」「串揚げ/串カツ」「炊き込みご飯/かやくご飯」など。
微妙な違いはあるかもしれないが、基本的に同じものだろう。

さて、こちらの二つはどうか。「金額」と「価格」である。森友学園をめぐり、概略こんな答弁があった。
「金額のやり取りはしたが、価格の提示はしていない」。
特別国会で財務省の太田充・理財局長が述べていた。

学園側と生々しくお金の話をした音声データの存在は、否定できない。
一方で、どうにかして「価格の交渉はしていない」と言い張りたい。
そんな無理が、珍答弁に現れたのだろう。
9億円台の土地を1億円台まで値引きした根拠は、依然はっきりしない。

聴く人に納得してもらう気などないかのような答弁を重ねて、特別国会が終わろうとしている。
年末にかけて所得税などの増税論議があり、年明け2月には確定申告もある。
森友学園の疑惑を否定し続けた後に国税庁長官となった佐川宣寿氏が、徴税実務の責任者である。

国民の資産をどう扱ったのか、きちんと説明できなかった人なのに。
それでも安倍晋三首相に言わせると「適材適所」だそうだ。「冗談でしょ/うそやろ」