10月20日(金)朝日新聞東京版朝刊オピニオン面・社説余滴

坪井ゆづる(政治社説担当)  首相こそ、胸を張れますか

いったい、何を言い出したのか。目の前にいる安倍晋三首相の返答に耳を疑った。

日本記者クラブ主催の8日の党首討論会で、首相はいきなり朝日新聞を批判した。

同クラブ企画委員の私の質問は、加計学園の獣医学部問題。愛媛県今治市の国家戦略特区での
新設を、首相は今年1月20日まで知らなかったという国会答弁について、「イエスかノーか」で問うた。

首相はこれに答えず、特区を審議した民間議員が国会で「プロセスには一点の曇りもない」と
述べたことを、「朝日新聞は報道もしておられない」と決めつけてきた。

「しています」と返すと、首相は「いや、ほとんどしておられない。しているというのはちょっとですよ。
ほんのちょっと。アリバイ作りにしかしておられない」。

特区の旗を振った加戸守行前愛媛県知事についても「証言された次の日には全くしておられない」
と続けた。

これにも「しています」と反論すると、首相は「本当に胸を張って(記事に)しているということができますか」
と聞いてきた。「できます」と答えると、「ぜひ国民の皆さん、新聞をよくファクトチェックして」と言った。

意に沿わぬ事実は「フェイクニュースだ」と言わんばかりだった。

  (続く)