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中村文則(芥川賞作家)  「総選挙 日本の岐路」 A

一連の感覚は世相にも現れているように思う。「中村(僕)は安倍政権を批判したから売国奴」と
ある人物から言われたことがある。

首相という立場は、国民から厳しい目で見られ、時に批判されるのは当然のこと。とても辛い
立場だ。正直そう思う。でもそれらに懐深くいられる人物だからこそ、逆に首相という困難な
立場にいることができるともいえる。政権批判=売国奴(非国民)の幼稚な構図が出来上がった
のは、小泉政権でその萌芽はあったが、安倍政権で本格化したと僕は感じる(他の首相では
滅多にそうならない)。事実が重視されないフェイクニュースの問題も顕在化している。理性的
とは言えないヘイト・スピーチや揶揄や罵倒がネット上に溢れるようになったのはもっと前から
だが、年々酷くなっている印象を受ける。安倍政権を熱烈に支持する「論客」などには、彼らなり
の愛国のせいか、どうも排他的な人達が散見され、そういった言説を広げようとする傾向がある。

知人と憲法の話になり、僕が個別的自衛権と集団的自衛権の違いなどの話をしながら現憲法を
擁護していると、面倒くさそうに説明を遮られ、「でもまあ色々あるんだろうけど、(憲法を変えないと
戦争できないから)舐められるんじゃん」と言われたのはつい先月のことだった。「舐められるじゃん」。
説明よりシンプルな感情が先に出てしまう空気。卵が先か鶏が先かじゃないけれど、これらの不穏な
世相と今の政治はどこかリンクしているように思えてならない。時代の空気と政治は、往々にして
リンクしてしまうことがある。論が感情にかき消されていく。

  (続く)