読売 社説 2017年12月29日
スパコン詐欺 先端技術への不信を招かぬか
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/20171228-OYT1T50141.html
 高度な技術への挑戦では、開発の途中で様々な困難に直面する。目標達成に要する費用も、確たる推計は容易でない。
そこにつけ込まれたのだろうか。
 スパコンは、研究開発や産業に不可欠の存在である。日本は、産官学を挙げて世界の最先端を追い続けてきた。政府は、
厳しい財政下でも予算を投じてきた。
 斉藤容疑者のグループ会社にも経産、文部科学両省が約100億円を助成・融資している。文科省所管の研究法人には、
関連するスパコンが計6台、共同研究などの名目で設置されている。大学などとの共同研究も進行中だ。
 グループの技術が、専門的には評価されてきたのだろう。

 斉藤容疑者のグループ会社は約100人の体制だ。少数精鋭で、頭脳部のプロセッサー、記憶デバイス、これらを組み合わ
せた全体システムまで手がけてきた。
 4年近く前にスパコン開発に着手し、短期間で世界水準の計算速度や省エネ性能を達成した。
 プロセッサーを特殊な液体に浸して、稼働時の熱を効率よく取り除く「液浸冷却」システムが注目され、国内で販売実績がある。
 斉藤容疑者は、代表を辞任する意向だ。事件の代償は大きい。将来のスパコンにも生かし得る技術をどう継承していくか。
それも忘れてはならない課題だ。