>無職・原田祥二郎・75才(福岡県田川市)

善意も通じない世の中に=みんなの広場 毎日新聞 2017年5月14日 東京 朝刊

 スーパーで買い物を済ませ車で戻っていると、同じスーパーで買い物をした様子の高齢の女性が
荷車を引いて徒歩で帰っていたのが目に付いた。

 そのお年寄りを追い越してから程なく小雨が降り始め、やがて本降りとなった。
ふっと先ほどのお年寄りのことが頭をよぎり、傘は持っていなかったようだし、ぬれているのではないかと気になった。
しかし、他人のことだし無視しようかとも思ったが、自分の気持ちが許さずUターンした。

 案の定、その人は片手を頭上にかざしぬれて歩いていた。

 車を傍らに着け「乗りませんか。送りますよ」と窓を開けて声をかけた。すると「家は近くだから、いいです」と意外な返事が返ってきた。
その辺には家はなく、周囲は田んぼ。

 帰宅して妻に話したところ「今は何かと犯罪が多いので、警戒されたのでは」という。なるほど、そうかもしれない。

 善意も通じない世の中になっているのかと暗たんたる思いにとらわれた。

=====https://mainichi.jp/articles/20170514/ddm/005/070/054000c

傘だけにしときゃいいものを「乗りませんか」なんて…「鳥越世代」だから仕方ないか…