5月9日(火)朝日新聞東京版朝刊「声」欄

フリーターの私は「一般人」?   フリーター 深谷直史(埼玉県 26)

犯罪の計画段階で処罰する「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ組織的犯罪処罰法の
改正案について、安倍晋三首相は「市民団体など一般の方が対象となることはない」
と言い切る。だが、政府は「正当な活動をする団体でも、性質が組織的犯罪集団に
一変すれば対象になり得る」とも説明している。「一般の方」の定義はあいまいだ。

さらに「一般」かどうか判断するのが捜査機関や裁判所というのも不安だ。
裁判所が本当に歯止めになるのだろうか。今も、不必要な勾留など、裁判所による
人権侵害を指摘する人がいる。裁判所なら安心とは思えない。

テロ対策だというが、処罰対象が無制限に広がる危険を感じる。「一般」の人が
監視を恐れ、自由に行動したり、表現したりすることをためらうようになるの
ではないか。そんな社会は嫌だ。

ところで、私は「一般人」だろうか? 高校や大学を出て、就職して暮らしている
「一般人」から見れば、いい年をして定職に就かない私は一般人とは言えないだろう。
「一般人」とはそれほどあいまいな言葉だ。この投稿を読んでいるあなたは、
「私は一般人だ」と胸を張って言えますか。
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「共謀罪」の対象になるか心配する前に、ちゃんと定職に就きなさい。