【電通のメディア支配】

電通は共同通信、時事通信というふたつの通信社と特別な関係を持っている。いずれも電通の歴史的な株主であり、
それには理由がある。この三つの会社は戦前は同一の企業体を形成していたのである。 新聞報道はテレビに比べる
と統制がむずかしい。この点においては電通は広告出稿しかできないが、ある種のアフターサービスを提供している。
メディアの監視、危機管理コンサルティング、 広告サービスを経由しての新聞への間接的な圧力の行使である。
フランスでは企業グループによる出版社の買収は企業からメディアへ直接的な圧力のリスクがかかることを意味して
いるが、日本では、圧力の行使は広告代理店を経由して行われている。 広告代理店がメディアに対する企業サイドの
「大使」の役割を演じているからである。「どういうようにそれが行われているか、私は熟知しています」と本間は
言う。「私は博報堂にいたとき、まさにそのような仕事をしていたからです。工場や発電所で何かトラブルが起きる。
メディアがそれについて報道すると、電通がただちに介入してきます。そして、問題になっている新聞の営業部門を
訪れます。」 別に声を荒立てるわけではない。ことは「日本的」に行われる。「ただ、この件についての報道をもう
少し抑制してくれないかとお願いする。記事にしないか、あるいは読者の少ない夕刊に記事を掲載してくれないか、
と」。 新聞の営業部門はそのメッセージを編集部門に伝える。 記者たちはそのプロセスについては何も知らない。
翌日になって続報はさらに小さな扱いになるか、まったく報道されなくなる。その場合には紙面に余裕がなかったと
いう理由が用いられる。