財政赤字容認の「現代貨幣理論」を“主流派”がムキになって叩く理由 / 中野剛志
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190426-00200555-diamond-bus_all

ところが、極めて面白いことに、MMTは、無視されないどころか、経済学者のみならず、政策当局、政治家、
投資家そして一般世論までも巻き込んで、全米で大騒ぎを引き起こしたのである。

その理由は、MMTが、主流派経済学者や政策当局が無視し得ない「不都合な事実」を暴露したからである。
もう一度言おう。MMTが突きつけたのは、「理論」や「イデオロギー」ではない。単なる「事実」である。

例えば、「インフレが行き過ぎない限り、財政赤字の拡大は心配ない」というのが「事実」ならば、
これまで、主流派経済学者や政策当局は、なぜインフレでもないのに財政支出の拡大に反対してきたのだろうか。
防災対策や貧困対策、少子高齢化対策、地方活性化、教育、環境対策など、国民が必要とする財政支出はいくらでもあった。
にもかかわらず、主流派経済学者や政策当局は、財政問題を理由に、そうした財政支出を渋り、国民に忍耐と困苦を強いてきたのである。

それなのに、今さら「インフレが行き過ぎない限り、財政赤字の拡大は心配ない」という「事実」を認めることなど、
とてもできないということだろう。

さらに、「財政赤字は民間貯蓄で賄われているのではない」という「事実」を知らなかったというのであれば、
「貸し出しが預金を創造する」という信用創造の基本すら分かっていなかったことがバレてしまう。
主流派経済学者や政策当局にとって、これほど不都合なこともない。彼らのメンツに関わる深刻な事態である。

というわけで、主流派経済学者や政策当局が、よってたかってMMTをムキになって叩いている理由が、これで明らかになっただろう。
その昔、ガリレオが宗教裁判にかけられたのは、彼が実証した地動説が教会の権威を揺るがしたからである。

それと同じように、MMTが攻撃にさらされているのは、MMTが示した「事実」が主流派経済学者や政策当局の権威を脅かしているからなのだ。