「悲しいまでに凡庸」だった青年が日本政治の頂点に君臨し、この国の姿を変容させるまで 安倍晋三氏のルーツを探る〈dot.〉
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190416-00000052-sasahi-pol

本書は、安倍晋三のルーツを丹念に探り、関係者への取材を重ねることで、
その思想の軽薄さを明示することに成功している。
父の呪縛から解放された時、その存在に反発するようにして接近したのが右派イデオロギーだったことが明かされている。
関係者の生の声が記録されている点を含め、本書の功績は大きい。

しかし問題は、そんな「悲しいまでに凡庸」な人物が、
長年にわたって日本政治の頂点に君臨し、この国の姿を変容させているという現実である。
この逆説をどう解くかは、青木が世の中に投げかけた課題であろう。

(文 /中島岳志・東京工業大学リベラルアーツ研究教育院教授)