気鋭のジャーナリストによる新自由主義批判
ジョーンズの名を有名にしたのは2011年刊行の『チャヴ 弱者を敵視する社会』(邦訳の出版は2017年)だ。
https://webronza.asahi.com/politics/articles/2019021300009.html?page=1

権力者へ向かうべき怒りが弱者に転嫁されるメカニズム

エスタブリッシュメントは国家に対しては、「個人を国家の束縛から解放しろ」と主張する一方、
もっとも貧しい人々に対しては「たかり屋」「怠け者」とラベリングする。
ジョーンズはこれこそが彼らに特徴的なイデオロギーだと指摘する。

では、エスタブリッシュメントは国家に依存しない存在なのか。
租税回避は、イギリスの富と権力のきわめて不平等な分配の一症状だ。
法は貧困者の不正行為を厳しく取り締まる一方で、富裕者のもっとずっと破壊的な行動は認め、手助けさえする。
租税回避で失われる何百億ポンドを、不正受給による12億ポンド(約1800億円)の喪失と比べてみてほしい。
不正受給のほうはニュースの定番のネタになって、怒ったタブロイド紙の見出しを飾っている。(258−259頁)

ジョーンズは、むしろエスタブリッシュメントが国の膨大な富と資源を受け取っていると繰り返し主張している。
その最たるものが金融業界に見られる。この業界はリーマンショックの際に国全体を未曾有の経済危機に陥れたにもかかわらず、
一兆ポンド(150兆円)を超える公金で救済され、その後は危機前と同じように仕事を続けているとジョーンズは苛立ちを隠さない。
ジョーンズは大企業や富裕エリート層が会計士や弁護士を雇って納税を意図的に避けていることや、国家にロビイストを送りこみ、
自分たちに都合の良い法律を作らせている点を指摘し、その悪質性に目を向ける必要を訴える。