これは、本書に目を通せばすぐにわかります。
まず前段の「ガッチン」が「山口」と喧嘩を始めた時、コペル君だけは足が動かなかった、と書かれていますが、コペル君も他の友達と同様に椅子から立ち上がり、加勢に加わろうとしていることはP80の2コマ目ではっきりと図示されております。
分割して転載A
それを制止したのは、いじめられている被害者本人である、「浦川君」です。
「浦川君」は、彼のために喧嘩をしている「ガッチン」に背後から抱きつき、「頼むから、ゆるしてやっておくれ」と自分をいじめている相手を助けるのです。

どういうわけか(おそらく、新幹線殺傷事件の引き合いに出すのに都合が悪いからだと思いますが)
このエピソードで最も重要なこの描写が、小林先生の要約からはすっぽり抜け落ちております。

続いて二回目の「友達を捨てて逃げ」の引用ですが。

これは小林先生がおっしゃる

>ひ弱な「浦川君」までが立ち向かっていったのに、コペル君だけは名乗り出ず友人たちが殴られるのを見ていた

というのはその通りです。
しかし、その後のコマで

>コペル君は自分の行動を激しく悔やむが、それをおじさんは、「君が大きな苦しみを感じるのは君が正しい道に向かおうとしているからなんだ」とか言って称賛する
>そして友達も、あっさりコペル君を許してくれるのだ。
>わしはこれを読んで思った。なんじゃこりゃ?

(以上『ゴーマニズム宣言』より引用)