日本よ、いい加減、現実を見よう 自由貿易が社会を傷だらけにする
柴山桂太 京都大学准教授
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/52829

少し前まで、世界中の国々に市場開放を押しつけていたのはアメリカだった。
ところが今では、新興国が自由貿易の意義を強調し、当のアメリカでは反自由貿易派の大統領が選ばれる。
時代の変化をこれ以上、雄弁に物語るものはない。
自由貿易への幻滅が拡がっているのはアメリカだけではない。

世界18ヵ国を対象に行われた英エコノミスト誌の調査によると、
「グローバル化で世界は良い方向に向かっている」と考える人の割合は、
アメリカ、イギリス、フランスなどの先進国で軒並み5割を切っている。
ベトナム、フィリピン、インドで、8割以上がグローバル化に好意的なのとは対照的だ。

先進国の人々がグローバル化に幻滅しているのは、
端的に所得がほとんど増えていないからである。経済学者のB・ミラノヴィッチの推計では、
1988年から2008年までの20年間で、実質所得を大幅に増やしたのはグローバルな上位1%と、
グローバルな上位40〜50%にあたる中国・インドなどの都市労働者で、
先進国の大多数の労働者(グローバルな上位10〜20%層にあたる)はその恩恵にあずかっていない。

先進国の中間層は没落し、グローバルな富裕層とグローバルな中間層が隆盛したのである。