天皇陛下のご快癒を祈りたい。陛下のご健康や78歳という年齢に配慮して、宮内庁には、今後の公
務の負担軽減を図ってもらいたい。陛下は18日、心臓冠動脈のバイパス手術を受けられた。約4時
間にわたった手術は無事終了した。多くの国民が安堵(あんど)の胸をなで下ろしたことだろう。昨年
2月の検査で、冠動脈の血管が狭くなる「狭窄(きょうさく)」が初めて確認された。医師団は薬物治
療を続けてきたが、今月の精密検査で狭窄の進行が認められた。バイパス手術を選択したのは、成功
率が高く、今後の陛下のご活動に支障がないよう血流を十分に回復させることができる、との判断か
らだったという。ただ、全身麻酔で胸を開く手術だ。回復にはある程度時間がかかる。がんとの闘い
も続く陛下には、どうか無理をなさらず、治療と静養に専念していただきたい。難しいのは公務との
兼ね合いである。年間1千件近い内閣の書類への署名・押印、首相や閣僚ら認証官の任命式、国賓歓
迎行事、地方訪問……。宮中祭祀(さいし)も多い。加えて昨年は、東日本大震災後、7週連続で被災
地や避難施設を訪問、陛下自ら被災者を励ましてこられた。11月の気管支肺炎での入院も、疲労蓄
積で抵抗力が弱まったため、と医師団は見ている。それでも陛下は、震災から1年となる3月11日、
政府主催の追悼式典への出席を望まれている。3年前、宮内庁は式典での陛下のお言葉を原則取りや
めるなどの負担軽減策を打ち出したが、行事削減までは踏み込まなかった。今後、陛下の体調が心配
されるときや静養の際には、皇太子さまが国事行為の臨時代行や名代を務めたり、皇族方が各種行事
に出席して陛下の思いを伝えるといった柔軟な対応も必要になろう。その陛下が心配されているのが、
皇室の将来である。現在、22人いる皇族のうち30歳以下は9人で、悠仁さまを除く8人が未婚女
性だ。結婚すると皇室を離れるため、次第に皇族は減っていく。近い将来、皇室活動の安定性に重大
な不安が生じる。政府は、皇族女子が結婚後も皇室に残ることを可能にする「女性宮家」の創設と、
皇室典範改正を検討するため、近く有識者からの聞き取りを開始する。
野田首相も、皇位継承問題と切り離して、女性宮家に早急の結論を出したい意向を示している。
陛下と、国民の安心につながる議論を望みたい。