このような第二次大戦中の朝鮮人に対する組織的な兵力動員・労務動員を、「朝鮮人戦時動員」と呼ぶこと
ができるでしょう。この朝鮮人戦時動員問題の本質は、日本帝国主義が朝鮮植民地統治という他民族支配の
なかで、自らの侵略戦争の遂行に被支配者の朝鮮人を無理矢理に利用したという構造にあります。この民族
的に支配されていた構造があったからこそ、日本人の戦争動員とは決定的に次元が異なるのです。
この日本の朝鮮支配のなかでの朝鮮人戦時動員は、次のような特徴的な現象をもたらしました。
(一)「強制連行」……兵役法による徴兵や国民徴用令による徴用は法的強制力が伴いました。志願兵や女子
挺身隊への志願・応募も皇民化政策による心理的強制が働き、労務動員の人数集めでは行政的圧力や時には
物理的暴力も作用したのです。
(二)「強制労働」……被支配異民族の反抗を抑えるために、軍隊での服務や軍需産業での就労は、徹底した
統制と監視がなされました。とくに鉱山や土建の労働現場では、タコ部屋のような奴隷労働もありました。
(三)「民族差別」……朝鮮人の民族性が否定され、日本人への同化が強要されました。日本人の優越的地位
が政治的に保障されるなかで、朝鮮人の人格が無視されるような差別的処遇や虐待も起こりました。戦後、
日本政府による戦争被害者援護法の適用対象から朝鮮人が除外されたことは、戦争が終わってからもなお民
族差別が政策的に続けられていることを如実に示しています。
朝鮮人の戦時動員は、日本人の動員とも違い、一般的な朝鮮人の日本への渡航とも異なるのは、このような
特徴的現象があるからです。この現象のうち、動員が朝鮮から朝鮮外への移動であったこと、その移動が国
家の政策として法的・行政的強制力が働いたことから、その点を強調して「朝鮮人強制連行」と一般に言わ
れているのです。その言葉には、日本帝国主義の侵略戦争や植民地支配を厳しく告発する意味が込められています。
金英達「強制連行の研究」