コジマ、「郊外での競争」を生き抜く独自戦略
「ミニ四駆」大会から酒販売まで集客力を磨く

ビック流再建は一時頓挫したが1990年代、コジマは「安値世界一」を掲げ、徹底した低価格戦略で急拡大した。
1998年には業界首位に上り詰めたが、2002年にヤマダ電機にその座を明け渡した。

巻き返しを図ったコジマは出店攻勢と無理な値引きを繰り返し、収益が悪化。
8期連続の営業赤字を出し、2012年にビック傘下での再生に望みを託した。

傘下入りの当初は、ビックとの共同仕入れによる採算改善のほか、ビック流にテレビなど黒モノ家電や玩具の充実を図った。
しかし、冷蔵庫や洗濯機など白モノ家電が中心だったコジマがいきなり黒モノの売り場を拡張しても販売力がついていかない。
ビック流の再建は暗礁に乗り上げた。転機となったのは2015年6月、ビックからコジマに移ってきた塚本智明氏
(現、副社長)の専務就任だ。塚本氏はビックの旗艦店である有楽町店の店長も務めた営業のエース。同氏は「コジマのメンバーとしてコジマを理解し、
コジマの自信を取り戻す」と、原点である白モノの再強化を打ち出した。まず得意の白モノの売り場面積を広げたうえで、ビックの力を活用する
方針に切り替えた。

郊外店で情報の先駆者になる現在ではビックの販売データの活用も進んでいる。
都市部に多いビックは販売のトレンドをいち早くつかめる。たとえば、ビックでは共働き世帯の増加で時短家電として自動乾燥機がついた
高機能の洗濯機やロボット掃除機が売れている。このような流れをビックの販売データで事前に察知し、コジマでも
生かしているという。

「郊外店の中で情報の先駆者となり、競合店よりも半歩先に行ける」(塚本氏)。
求められる商品の品ぞろえを事前に充実させ、需要を逃さないことで強みの白モノの拡大を支援する。
もちろん都市部中心のビックと郊外中心のコジマでは違いもある。ビックではよく売れるイヤホンやポータブル音楽プレーヤーなどは、
「電車ではなく車での通勤が多い郊外では売れなかった」(塚本氏)。
あくまでコジマが主体的に取り組むことによって、データが生かされる。

一時は伸び悩んだデジタル家電も好調だ。グループにパソコン専門店ソフマップを抱える強みを生かし、販売員の研修を強化。
パソコンの平均販売単価は2万円上がったという。

コジマ独自の取り組みも進む。柱は「体験」だ。
全国の店舗でミニ四駆大会や子ども向けのプログラミング教室、図工教室を開催している。荒川忠士・経営企画本部長は体験型
イベントについて「来店するきっかけを作ってもらい、家電を買うときにコジマを思い浮かべてもらいたい」と狙いを語る。

ミニ四駆大会では、北海道から沖縄まで各地のコジマの店舗で行われる
地区予選から全国大会へ勝ち進むトーナメントが行われる。
全国大会が始まって今年で3年目。地区予選の試合でも最大70名がエントリーし、
数百名の観衆が集うときもある。子どもだけでなく、子どもの時にミニ四駆を楽しんだ大人も参加。店舗内ではミニ四駆のパーツも売られており、
大会開催中はピットインコーナーが設置され、店舗内でミニ四駆の「整備」を行うこともできる。
ミニ四駆を走らせるための常設コースを設置する店舗も多数あり、「ミニ四駆を走らせるためにコジマに来た」という客もいる。

”完全復活”は目前
「ようやく実力を持続的に発揮できるようになった」(荒川氏)。
ビック傘下に入って6年、2018年8月期は3期連続で2ケタ以上の営業増益となったもよう。9月から始まった新年度では、
長らくマイナスだった利益剰余金もプラスに転じ、復配する見込みだ。

業界では家電販売が頭打ちとされ、ヤマダ電機やエディオンなどの大手は住宅事業に裾野を広げ、新たな活路を見だそうとしている。

コジマもお酒や玩具、日用品など非家電商品を拡充するが、あくまで主役は家電販売。競争の厳しい郊外店の中で、「コジマに行こう」
というきっかけ作りを大事にする。体験イベントもその一環だ。
「店舗の品ぞろえの幅を広げ、客足を根付かせて、消費増税など落ち込むときの影響を緩和したい」(塚本氏)という狙いもある。

完全復活に王手をかけたコジマ。都市部のビックと郊外のコジマというシナジーが続いていくのか。今後もその独自戦略に注目が集まりそうだ。