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『御琴割』  (お断り)

 平安時代 貴族の間では琴をたしなむことが風流とされていた
 貴族の家に生まれた女性は外出を滅多にすることがなく、
家族にさえ顔を見せることはあまりなかったといわれている。
 そんな姫君たちに求愛する男性は、姫君の弾く琴の音を聴いたり
あるいは「垣間見」(のぞき見)したときに見えた黒髪を見て、
その容姿や人柄を想像していたとされている。

 そしてその女性に「懸想文」といわれる恋文を贈り相手の女性から、
承諾の手紙をもらうのであるが その際 琴を同時に贈るのが常であった。
 相手の女性から承諾の手紙をもらい女性の部屋へと赴くのであるが
「三日夜の餅の儀」といい三日間続けて女性のところに通う必要があった。
 この三日の間に 女性のほうより男性の求愛を拒絶したい場合は
手紙とともに 男性より送られた琴を割って玄関にかけておいたと言う。
 後にこの琴を割る風習はすたれ 手紙のみで返事をするようになったが、
この手紙をこれにちなんで 「御琴割の手紙」転じて「お断りの手紙」と
言うようになった。

 今日ではこの「お断りの手紙」は クレジットカードの審査時など
恋愛事だけでなくさまざまな分野において
相手の申し入れを拒否したい場合に使われている。

 

 民明書房刊   『平安時代の恋愛事情』より