>>926
「あなたの気持ちはよく判ったわ。無理もないでしょうね。そして雛苺も。
ただ、ここは私に任せて頂戴。薔薇乙女には、薔薇乙女なりのケジメのつけ方がある。」
「翠星石! 悪いけど、貴方に同情の余地はないわ。貴方は明らかに薔薇乙女の誇りを穢し、
そして人間とドールの絆をズタズタにしたのだわ。私たちはローゼンメイデン。
人により造られしもの。人を悦楽させるべき存在であるはずのドールが
随分と出過ぎた真似をしたものだわ。あなたはジュンの意識野を陶冶し潤沢させるべき
『夢の庭師』のはず。しかしあなたはジュンを補助するどころか寧ろその邪魔になる
存在に成り果てたのだわ。わかるわね?翠星石・・・・・・・」
そんな、そんなつもりではないのですぅ!わかってくださいですぅ!
翠星石はジュンや雛を・・翠星石なりに想っていたのですぅ!
内気なジュンを元気づけてやりたかったですぅ!  
そんなことでも云おうとしていたのだろう。しかし粘る口腔がその発言を許さなかった。
『ゾンナァ、ゾォンナァヅゥヴォォリダァダイベズゥ!バガッデグダダイベズゥ!グベッ!』
ヘド声で必死に弁明する翠星石。しかしその姿が一層、ジュンの憎悪を掻き立て、
彼の心の中にどす黒くねっとりとした闇の領域を拡大させたのだった。
「うるさいんだよ!ヘドロ以下のクソミドリ!もう我慢の限界だ!こうしてやる!」
そう叫ぶとジュンはどこから調達したのか、太針のアイスピックをやにわに取り出し、
翠星石のチャームポイントのひとつ、そのオッドアイの紅い右眼に振りかざそうとした!
「やめなさい、ジュン。気持ちはよく、判るわ。でも、眼はドールの命よ。
人形師は、最後に、魂を込める仕上げとして、ドールに眼球を嵌めるの。判って頂戴。」
はじめて真紅が自分に味方してくれた、そんな一時の喜びから、
虐待三昧の翠星石の罅割れた顔面にほのかな笑みが増した。