最大の魅力は、この二つは同時に作ろうとすれば必ず失敗することから「二度なし」とも言われた。
また、萩焼には絵付けや印判も行われており、
これは江戸時代に藩窯で焼かれていたもので、現代でも一部の愛好家に珍重されている。
そんな萩焼の中でも最高級品とされるものが『御本茶碗』と呼ばれるものである。
御本とは、藩主毛利輝元を指す尊称であり、つまりはこの茶碗は輝元の私物であったことを意味する。

その価値たるや国宝に指定されてもおかしくないほどのものであり、
古美術商の間では時価数億とも噂される代物である。
そんな御本が今、俺の目の前にあるのだ。
俺は無言のままそれを眺める。
そして思う。
これは夢なのではないかと。
だってそうだろう? 天下人・織田信長が愛したと言われる茶器の一つだぞ? それがこんなにも簡単に手に入るわけがないじゃないか。