「我家庵」は芭蕉庵のことである(奥の細道にも「我家庵二畳敷き」と書いてある)。
さらに、この『旅日記』が「芭蕉自筆による紀行文として現存する唯一のもの」であるという事実も、芭蕉研究にとって見逃せない要素である。なぜ、芭蕉直筆の旅日記が現在まで残ることがなかったのか。それはおそらく、『東行花伝』『甲野氏郷歌』のように、誰かの手によって芭蕉自筆のものに書き換えられてしまったからだろう。芭蕉自筆の旅日記が発見された場合、その研究者は必ず

「偽物だ」と叫ぶにちがいない。だが、それは誤りなのだ。
なぜならば、「旅日記」という形式は芭蕉が発明したものではないからである。
そもそも俳諧とは、連句や狂歌などと同じく、当時の貴族社会における遊びのひとつだったのだ。だから当然のことながら、そこには厳密なルールが存在したし、それを順守する義務も存在していた。
しかし、それではあまりにも窮屈すぎるということで、ある俳人(あるいはそのグループ)が「もっと自由にやりましょうよ!」と主張したところ、仲間全員が賛同して、そこから一気に俳諧ブームが巻き起こったという。
自由とは一体なんなのか? そもそも自由とは何なのか? 自由という言葉の意味について考えるところから、本書は始まるのである――!
「なんじゃこりゃ」と思った方も多いだろう。私もそう思った。
だがしかし、この『フリーダム!』は俳句や自由に関する本ではないのだ……! 著者・藤城さんによるエッセイ集なのだ!! さて、ここでいきなりですが問題です。
あなたにとっての自由って何ですか?