>>93から
 このような条項は「競業避止条項」と呼ばれ、フランチャイズ契約や一般的な労
 働契約においても規定されることがあります。美容師として雇われていた労働者
 が、退職後も1年間は近隣で独立開業できないとか、フランチャイズに加盟して
 いたラーメン店は、フランチャイズを脱退しても同じ場所でラーメン店を開業で
 きないという取り決めが典型例です。

 競業避止条項の有効性についてはたくさんの裁判例がありますが、有効と判断さ
 れたもの、公序良俗(民法90条)に違反するので無効と判断されたものなど判断
 が分かれています。

3.職業選択の自由は憲法で認められている

 そもそも憲法22条は職業選択の自由(営業の自由)を認めており、競業されても
 会社がそれほど困らない場合、競業を禁止する地域が不必要に広い場合、競業を
 禁止する期間が不必要に長い場合などは、競業避止の契約が無効であると判断さ
 れます。実際に2006年には東京地方裁判所で「芸能人の芸能活動について当該契
 約解消後2年間もの長期にわたって禁止することは、実質的に芸能活動の途を閉
 ざすに等しく、憲法22条の趣旨に照らし、契約としての拘束力を有しない」とす
 る判決が出されています。

4.次に「優越的地位の濫用」です。

 独占禁止法は、契約の一方が優越的な地位にあることを利用して、契約の相手方
 に不利になるような条件を設定すること(優越的地位の濫用)を禁止しています。
 芸能事務所が出す条件を芸能人が拒否することは現実的でないとすると、優越的
 な地位を利用して、芸能人側からのみ所属契約解約ができないようにすることは、
 この禁止規定に抵触する可能性があります。