正確に意図が伝わらない仕様は仕様と言えるのか?

――一番古いものから自動的に消えていくわけではないのですね。

吉田氏:
1回それで実装されていたのですが、僕のチェック段階で変更してもらいました。
古いものから自動削除されるのなら、自動削除対象外にする「メッセージロック機能」がないと話にならない。
「このメッセージは絶対に残したい」というニーズに今はまだ応えられないのなら、勝手に消すのはありえないということで、自動削除機能は付けない状態でのリリースとなります。
「任意で消せるようになるなら、ロック機能は必要ないんじゃないですか?」とも聞かれたんですが、「そういうものじゃないんだよ」と。
「いらないものを任意で消す機能」と、「絶対に消したくないものを指定するという機能」は、まったく別のものです。
そして本人にとって、消してよいメッセージと、消したくないメッセージは、僕たちには判別できない。
「消したくないものはロックされている」という安心感があるのとないのとでは、使い心地が全然違います。
こうした感覚を持つのは、仕様を切る上でとても大切ですが、僕自身、長年のプレイ経験で身についたものです。

最初からそんな仕様は書けません。

開発者であっても、「それくらい先回りして考えろ」というのは無理難題すぎるので、
こういう事例こそきちんと説明をして、感覚を受け継いでいって貰えたらなと思っていたりします。

――ミスって絶対に発生しますものね。

吉田氏:
このようなニュアンスを開発チームに伝えるのは本当に難しい。
でも、オンラインゲームならではの「気づき」でもあると思うのです。
だから開発していて楽しい、と感じる要因でもありますね。