2024年1月2日 06時00分 

 新型コロナウイルス禍後も、東京都東村山市のバス会社が存続の危機にひんしている。コロナ感染拡大期に国の要請で路線バスを走らせ続けたことで、収支の悪化を招いた。
社長の山本宏昭さん(60)は「コロナ禍でも懸命に運行したが、支援はほとんどなかった。世の中から忘れ去られているように感じる」と唇をかむ。(岡本太)


◆コロナ禍で乗客激減しても要請踏まえて運行継続

 東村山、小平、国分寺市で計2路線を運行する「銀河鉄道」は、子どもの頃からバスが好きだった山本さんが、24年前に設立した。両路線は通学や通勤、買い物、通院などで1日約2300人に利用されている。
 路線バスは採算が厳しく、貸し切りの観光バス事業の収益で赤字を穴埋めしてきた。ところが新型コロナ禍で貸し切りバスの利用がほとんどなくなり、路線バスの乗客も普段の2割に落ち込んだ。
 国は緊急事態宣言時の基本的対処方針で、バスなどの公共交通機関に対し「社会の安定の維持」のために事業継続を要請。収支を考えれば運行を止めた方が良いのは明らかだったが「世の中のためになるなら」と走り続けた。
 山本さんは中小企業向けの実質無利子無担保のゼロゼロ融資や、税の納付猶予などを活用。「コロナ禍を乗り切った後、反転攻勢をかけよう」と考えていた。
 ところが2022年秋ごろから、税や社会保険料の納付時期について、柔軟に応じていた税務署や年金事務所の対応が変わった。月々に求められる支払いが2倍近くになり、会社の財務状況が一気に逼迫(ひっぱく)した。



◆燃料費高騰が追い打ち、春には再び資金難も

 23年に入り燃料費の高騰が追い打ちをかけ、事態は悪化。年末年始の運転資金を確保するため、保有する10台のバスのうち、貸し切り用に使っていた3台の売却を決断した。
 路線バスの存続について東村山市などにも相談したが、支援につながる動きはない。猶予されていた税金などの納付を求められている現状では、収入が支払いに追い付かない。バスを売っても、数カ月後の今年春ごろには、再び資金が不足する可能性が高い。

 コロナ禍では、休業要請に従った飲食店に協力金が出たり、事業を縮小した企業に雇用調整助成金が支給されたりしたが、同社はいずれも対象外。
山本さんは「国の要請に従って、コロナ禍でも必死にバスを走らせたのに、こんなに苦しまないといけないなんて」と言葉を詰まらせた。

https://www.tokyo-np.co.jp/article/299127
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