故・渡辺和子さん
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旭川荘が保育所の新設を計画している「ひらた旭川荘」
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 社会福祉法人・旭川荘(岡山市北区祇園)は、ノートルダム清心学園前理事長の故・渡辺和子さんから相続した著作権の収入を活用し、2019年4月、障害者施設を集めた「ひらた旭川荘」(同平田)内に保育所を開設する。「著作権を障害者らのために」との遺志を継ぎ、医療や福祉のノウハウを生かして障害児や医療的ケアが必要な子どもを健常児とともに受け入れる。渡辺さんの死去から30日で1年―。

 渡辺さんは修道者として信仰と教育に身をささげる傍らベストセラー「置かれた場所で咲きなさい」など多数の著書を残し、89歳で亡くなった。旭川荘とは江草安彦名誉理事長(故人)が学園役員に就くなど関係が深く、遺言で「恵まれない子どもたちや障害のある人、高齢者のために使って」と著作権を託していた。

 旭川荘は1956年の創設以来初となる保育所の設置を以前から検討しており、今年10月末に岡山市の認可保育所運営事業者に選ばれた。その上で渡辺さんの遺族に著作権収入の利用について打診し、快諾を得たという。収入をどの程度活用するかは今後内部で協議して詰める。

 計画では保育所は定員90人。障害児は重度の発達障害児など定員の15%程度を想定し、受け入れ規模は岡山市内に11施設ある障害児保育拠点園(定員10〜12人)並みか、それ以上となる。スタッフは高い専門性を備えた保育士のほか、たんの吸引などの医療的ケアが欠かせない子どものために看護師も配置する。建物は鉄骨2階延べ約1千平方メートルで、一般保育室や障害児の専用保育室などを設ける。

 ひらた旭川荘は、市が保育所の整備を募る中学校区内にあり、発達障害児や重症心身障害児向けなど旭川荘の施設が集まっている。保育所は各施設と連携し、障害児がいる家庭のケアや妊産婦のための子育て教室も開く予定。重症児の母親の就労支援のため、就職活動中の一時保育も受け入れる。

 渡辺さんのめいの小林依子さん(84)=東京都=は「叔母が半世紀以上お世話になった江草名誉理事長への恩返しに遺贈した。修道者として助けを求める人に寄り添いたいと願った叔母の思いを生かしてもらえる」と喜ぶ。旭川荘の末光茂理事長は「貴重な財産を活用させていただき、大変ありがたい。障害の有無にかかわらず、誰もが心豊かに育つような保育を心掛けたい」と話している。

山陽新聞 2017年12月30日 09時33分
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