(画像)
廃校となった小学校の体育館で取り組むウナギの養殖
(画像)
販売できるサイズに育ったウナギ
http://www.sanyonews.jp/article/546178/1/
このPDFを表示

 「“森のうなぎ”できました」―。岡山県西粟倉村で1次産業の振興などに取り組む民間企業「エーゼロ」(同村影石)は13日、廃校の小学校体育館で養殖したウナギの販売を始める。空き施設や豊かな自然環境といった地域資源を活用した産業興しの一環で、村の経済活性化を図って定住促進に結び付けるのが狙い。将来的には水田などで養殖できる魚種を選び、農家らの所得向上にもつなげる。

 ウナギの養殖は昨年5月にスタート。村から管理を任された旧影石小体育館に五つの養殖槽(直径5メートル)、ろ過槽、水温管理装置などを配置。地下水も活用し、約1万匹の稚魚(5グラム)を育てていた。既に300グラムほどの大きさになり、試食では味も良好だった。

 さばいた身を真空パックにしてインターネットで全国販売。商品名は「西粟倉村でゆっくり育った森のうなぎ」で220グラム3024円から扱う。近く成魚も村内飲食店に卸し、初年度は計8千匹の販売を目標にしている。
設備投資は約4千万円。うち9割程度を「農林水産業みらい基金」(東京)の助成で賄った。現在、水温管理に必要なボイラーの燃料の灯油を、村の木材に切り替えることや、養殖槽の水を堆肥化することも検討している。

 養殖事業は今後、かば焼きで注目を集めるナマズ、県南部の郷土料理となるフナ、高値で取引されるモロコなども視野に入れている。技術を蓄積しながら水田や低価格の簡易装置での養殖を実現させ、農業、林業従事者の“副業”としての普及を目指す。

 エーゼロは、村の第三セクター「西粟倉・森の学校」の木材加工業以外の業務を引き取る形で、2015年10月に設立。社員25人。村内で「人・モノ・金」を循環させることを目的に、養殖業や建築業、獣肉加工流通業のほか、起業家の育成などに取り組んでいる。

 牧大介社長(43)は「地域資源の活用法を探り、最初にたどり着いたのが需要のあるウナギだった。今後も雇用を生み、地域の課題を解決していく会社運営を目指す」と話している。
(2017年06月12日 23時45分 更新)