イトミミズを自然増殖させるパイル生地(みなべ町のウメタで)
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 ◇パイル生地で増殖 微生物食べ汚泥減

 県が管理する下水処理施設でイトミミズの活用が検討されている。汚泥の原因になる微生物を食べさせ、処理費用の削減につなげる。
自治体が取り組むのは珍しいとみられ、先行導入した県内の梅加工会社では最大で約8割の汚泥削減に成功。
こうした成果を踏まえ、県は新年度からの試験導入に向けて準備を進めている。(久米浩之)

 イトミミズは糸のように細い赤色のミミズで泥の中などに生息。魚の餌に使われている。

 下水の処理槽に地元特産のパイル織物で作った生地を仕込んでイトミミズをすみ着かせ、下水の温度、成分などを調整して自然増殖を促す仕組み。
県工業技術センターがパイル織物を扱う「オーヤパイル」(橋本市)、浄化槽などの設計、施工を手がける「エコ和歌山」(田辺市)と共同開発し、2015年7月に特許を取得した。

 県工業技術センターによると、この処理方法は梅加工会社「ウメタ」(みなべ町)など県内6か所の民間企業が既に導入。
ウメタでは梅洗浄後の廃液から発生する汚泥が、最大で1立方メートル当たり6・5キロから1・1キロに減ったという。

 泰地伸明工場長は「環境に優しいだけでなく、大きな効果があった。汚泥が減った分、管理にかかる手間も楽になってありがたい」と喜ぶ。

 ウメタでの実績を受け、県は伊都浄化センター(かつらぎ町)や那賀浄化センター(岩出市)での導入を前向きに検討している。
試験導入で効果が確認されれば、規模の拡大も検討する。

 一方で、本格導入には課題もある。効果があるのは農産物など有機系の汚泥のみで、砂利や金属は処理できない。
梅の廃液とは成分が違う生活排水への対応が求められる。下水処理施設の既存設備に影響を与えずに導入するための改良も必要になる。

 県工業技術センターの担当者は、「下水処理にイトミミズが有効だとわかった。地元特産のパイル織物の活用も推進できるので、新しい下水処理法として広げていきたい」と意気込んでいる。

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