皇位継承の伝統 皇學館大学現代日本社会学部 教授 新 田 均

はじめに
古くから日本の社会で受け継がれてきたものー「世襲」されるものーは大雑把
に言って二つあります。一つは、「祖先祭祀」、もう一つは「財産・職業」です。
この二つの継承原理は異なります。祖先祭祀は「氏」という父系(男系)を団結の
核とする集団によって受け継がれます。財産・職業は「家」という夫婦を団結の
核とする集団によって受け継がれます。
そして、前者の継承原理が純粋な形で続いているのは、皇室と出雲国造のみで
す。そして、国家との関係を有するのは皇室だけです。
ここに皇位継承の最終的 な拠り所があります。

、「皇統に属する男系」とは、そもそも何なのでしょうか。結論を予
め申し上げれば、「血筋・血統」についての日本の本来の考え方に則れば、
本人が男性であるか女性であるかに関係なく、「血筋・血統」とは、自分の父親、
その父親、そのまた父親と先祖を遡っていく父系、ちち系、のことです。
「女系天皇」という言葉で誤解が広がってしまったのは誠に残念ですが、
母親をたどっていく母系という「血筋・血統」というもの本来存在しません。
様々な父系、ちち系があるだけなのです。大切な点なので繰り返しますが、
世の中に男女の別は存在しますが、女系というものは存在しません。
皇統とは異なる様々な父系、ちち 系、(男系)があるだけです。
この原則に則って、皇室典範は、女性皇族との結婚 を通じて、
皇統とは別の父系に皇位が移り、初代の神武天皇以来の父系(皇統)が
断絶してしまうことを防ごうとしているわけです。