■明治皇室典範が打ち出した「万世一系の三原則」
井上毅は、わが国の皇位継承制度を整えるにあたり、外国法を導入するかどうかの
課題に直面して、まず西欧の王位継承の研究を徹底的に行ない、わが国が今日策定
すべき皇位継承法は、建国以来変らず守り続けてきた伝統法に基づくものでなければ
ならない、という確信を持ったのです。そして古来より伝えられてきた不文の法を、
三つの原則にまとめて、皇室典範において示しました。
 
一、『皇祚を践むのは皇胤に限る』
【皇位を継ぐことができるのは、神武天皇の血筋を引くご子孫に限る】
(井上毅の説明)
称徳天皇の御代に道鏡が皇位をうかがったような事件が起き、皇統が断絶する
危機が起きないようにするには、皇位を継ぐことができるのは、天皇の血筋を
引いている方に限らなければならない。宇佐八幡の神託を受けて天皇に復奏して、
道鏡を退けた和気清麻呂の言葉を紹介する。「わが国は開闢以来、
君臣の分定まれり。臣を以て君となすこと、未だこれあらざるなり。天つ日嗣には
必ず皇緒(皇統に連なる人)を立てよ。無道の人はよろしく早く掃い除くべし」
 
一、『皇祚を践むのは男系に限る』
【皇位を継ぐことが出来るのは、男系に限る】
(井上毅の説明)
わが国にも八方十代の女性天皇が存在したが、いずれも天皇になるべき方が
幼年ないし病弱であったか、成人されるまでの臨時の中継ぎとして即位された。
しかもこれらの女性天皇はすべて天皇あるいは皇太子の娘(皇女)である。
清寧天皇や武烈天皇のように、近親の皇族男子がなく皇位継承が危ぶまれた
時であっても、どんなに遠い家系(血縁)であっても、父方をたどると天照大神に
繋がる方をお連れして皇位についていただいた。

一、『皇祚は一系にして分裂すべからず』
【天皇の御位は、第一代神武天皇にさかのぼることができる一つの家系で
継承されなければならず、皇統は分裂してはならない】
(井上毅の説明)
大覚寺統、持明院統迭立から発展して皇統が二流三流に分れた南北朝の対立、
さらには北朝の分裂のような、皇統の分裂の再発が二度とあってはならない。