六韜(りくとう)は古代中国の兵法を解説した書。かの太公望が登場する有名な書だが、
敵を欺くことに手段を選ばない内容だ。▼例えば人物を評価する方法として、スパイを放
ち内通を誘う。あえて秘密を漏らし、人徳を探る。女性を接近させたり、酒に酔わせて態
度を観察する?などと説かれている。戦を前提とした策だとしても確かに正攻法ではない。
▼もっと驚かされるのは、排除したい権力者がいる場合、常にその言動を持ち上げること
で判断力を低下させよ?と指摘していることだ。このような策士に出会えば権力者は自己
反省する機会を失い、ボロボロになって失脚するだろう。▼天智天皇時代に活躍した藤原
鎌足の曾孫、仲麻呂が残した「大織冠伝」によると鎌足は、この書の愛読者だったらしい。
鎌足は中大兄皇子とともに蘇我入鹿を討った「乙巳の変」の準主役とされるが、その後の
彼の生き方を見ると「なるほど」と納得する。▼「六韜」は「隣国の優秀な人物とは、妥
協するな。愚鈍な者が来たときまとめろ」とも言う。そうすれば「隣国から優秀な人材が
追われ、愚鈍な人材ばかりになって国力が弱まる」との教えだ。この部分は日本の隣国も
よく知っている。▼近く日韓首脳会談が行われる。両国は冷めた関係に陥ったが、会談の
行方次第で「六韜」との絡みを推察できるかもしれない。