そのころ、安物の原色を身にまとう三元豚すなわち「例のあれ」は誰もいない河原で踊っていた
もっともデザイン19の影響を受けにくい行動パターン

「うむ」
加藤幹弘(56)は頷く
その表情はアメリカ人に剣術を教える薩摩藩の志士のそれだった

語られていたのは戦後のトレンド予想
白(シロ)が流行る───かの古賀氏の見通しを引用していた

加藤はHIDEチャン分析の第一人者と言っても過言ではないが
そのファッションだけは分析できずにいた
行動経済学に基づいたあらゆる禁治産者の行動パターンには精通しているが、
ファッションだけは知識が皆無なのである

しかし「モテたい」という思いは人並みにあった
「モテファッション」「秋冬最強コーデ」「女子が選ぶNGコーデ」
そうした言葉の羅列、おすすめ動画が加藤のモニター一面に表示されていた

白でいいはず、ハレでいいはず
いかなる情報を分析しても答えは出ていた
ゆえにHIDEチャンなるファッションがリカイできない

古着なのか、それにしては生地が分厚い
総柄なのかドラえもんなのか───このような服装はどの動画を見ても推奨されていなかった

ゆえに結論付ける
「HIDEチャンはファッションを誤っている」「モテ服を理解していない」

俺はリカイしたぞ───”明日そのハレとやらに臨店してみようぞ”

この判断がのちに完璧とまで言われた加藤を窮地に追いやることになる