私服可の学校であったにも関わらず洋服にはまったく無頓着で、スウェットの上下で登校し「パジャマで学校来てんなよ」と嘲笑されたこと数知れず。
なぜか靴ひもの結びかたをきちんと習得しないまま育ってきてしまったために、足元のスニーカーは十五歳にしていまだマジックテープというていたらく。
そしてお約束の「ウエストポーチ」に、当時もっともきつくクセがかかっていた忌まわしの天然パーマ。

見るも無惨な暗黒の中学時代である。

中学三年になるまえの春休み、生まれてはじめて女の子に告白をし、そしてフラれた僕はそれがきっかけでようやく外見に気を配るようになった。
まずはともかく「みっともない」と人から思われるような状態から一刻もはやく脱け出したくて、最初の一年間はその努力に終始した。

高校生になるころには繰りかえす試行錯誤それ自体がたのしくなってきて、自分が案外洋服好きであることに気づきはじめる。

そして二年生ともなると他人の目などはもはやどうだってよく、あるとき海外のファッション誌で見た何枚かの写真に衝撃をうけ、
その影響で「全身ピンク」という一般的にいえば正気の沙汰とは思えないようないでたちで登校したりもした。