精神科医の香山リカさんは「貧乏くじ世代」と名付けた。バブル崩壊後の1993年ごろから10年余り続いた就職氷河期に、就職活動で苦労した世代のことである
▼香山さんは大学教員でもあり、ゼミ生の大半が職探しに失敗した年もあった。数年たっても多くがフリーターのままだったと著書で語っている
▼彼らも今やアラフォー世代。2040年に向けた日本の課題を探る総務省の有識者研究会は先月、
「高齢者となる氷河期世代が社会のリスクになる恐れがある」と指摘した。高齢者数がほぼピークとなる時期と重なり、無視できない問題になるという
▼厚生労働省の外郭団体の調査では、非正規で働く氷河期世代は14年時点で400万人。
前後の世代より多く、失業率も高い。ここ数年の景気回復で月給が増える中、この世代は減ったとの調査もある
▼新卒時に不況のあおりを受けたことが尾を引いている。このままでは、老後の備えが不十分な高齢者が増え、先行き不透明な社会保障制度をさらに危うくしかねない
▼連合のシンクタンクは2年前、氷河期世代の職業訓練強化や、企業やNPOが正社員化を支援する連携組織の必要性を提言している。
安定した働き方は能力発揮や技能向上につながり、深刻化する人手不足の解消にも役立とう。安心できる老後のため、早く手を打たねば。
(2018年05月14日 08時00分 更新)
http://www.sanyonews.jp/article/714476/1/?rct=tekiitteki