中国の習近平指導部は最高指導部メンバーが大幅に入れ替わる今年秋の中国共産党大会を前に、インターネット上の言論統制を強めている。そうした中で起きた人工知能(AI)による共産党批判は、技術革新が生んだ“予想外の脅威”となりそうだ。(北京 西見由章)

 中国では習指導部と党長老らが河北省の避暑地、北戴河に集まり、国内外の重要課題について話し合う非公式会議が3日までに始まったもようだ。国営メディアは2日以降、最高指導部メンバーの個別の動静について報じていない。

 政治的に敏感な時期に入り、当局は矢継ぎ早にネット規制を打ち出している。中国の通信アプリ「微信(WeChat)」などの運営会社は当局の指導を受け、ユーザーが情報を発信する「個人メディア」の内容が不適切だとして先月末までに計約400のアカウントを閉鎖した。また共産党は党員に向けて、「違法・反動のサイト」を閲覧することを禁じ、SNSなどの登録情報も報告するよう通知した。

 当局の意向を忖度(そんたく)しない人工知能の“言論の自由”は新たな問題だ。中国は2030年に向けた科学技術イノベーション計画の中でAIを重点プロジェクトとして指定。習近平国家主席も5月に北京で開いた「一帯一路」国際会議の開幕式で、AIなどの先端領域で連携を強化し「21世紀のデジタルシルクロード」をつくろうと提案した。

 ところが、中国のIT企業によるAIプログラムは「愛国とは何か」と聞かれ「官財が結託し一般の人民への圧迫が厳しくなっても中国人であることを選ぶことだ」と回答。「民主(制度)」についても「必要だ」と断言したという。海外のSNSでは、中国人から「AIの水準は高い」「その独立思考能力は党の『敵』として位置付けられるだろう」との声が上がっている。

http://www.sankei.com/world/news/170803/wor1708030061-n1.html
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4月、北京の大規模展示会に設置された騰訊(テンセント)社のブース。同社提供のAIプログラムが共産党批判≠繰り広げた(ロイター)