盛岡市の認可外の保育施設で2015年8月、食塩入りの液体を飲ませて1歳女児を死亡させたとして、岩手県警は11日、施設の元経営者でパート従業員、吉田直子容疑者(33)=同市北飯岡2=を傷害致死容疑で逮捕した。

 逮捕容疑は、15年8月17日午前10時半ごろから同18日午前0時5分ごろまでの間、施設で預かり保育中だった下坂彩心ちゃんに食塩入りの液体を飲ませて塩化ナトリウム中毒で死亡させたとしている。

 県警によると、吉田容疑者は食塩を摂取させたことは認めているが「体調を悪くさせるつもりはなかった」と容疑を否認しているという。

 彩心ちゃんの父親の亘さんが18日午前0時すぎに施設から引き取った後、異変に気付いて病院に運んだが、彩心ちゃんは約5時間後に死亡した。病院が県警に通報した。18日は彩心ちゃんの1歳の誕生日だった。

 県警によると、施設では通常、保育士数人が幼児数人を世話していたが、事件当時は吉田容疑者が1人で、利用者も彩心ちゃん1人だった。吉田容疑者は保育士の資格を持っておらず、県警は経緯などを調べる。

 盛岡市子ども未来部によると、吉田容疑者は15年7月1日に施設を開所したが、事件後の同8月末に閉所したため市は施設の現地調査をしていなかった。施設の営業時間は午前8時から翌午前4時までで、常勤の保育士は1人だった。

 彩心ちゃんの両親は11日、弁護士を通じて「この2年間、その日何があったのか全く分からず、言い表すことのできない怒りとつらさを味わってきました。もう娘は帰ってきません。でもせめて、真実が明らかになり、二度とこのようなことが起きないよう切に願っています」とコメントした。

 吉田容疑者の自宅近くに住む30代女性は「話したことがあるが普通の人で休みの日は近くを散歩していた。最近は姿を見ていなかった」と話した。

過剰摂取で脳にも障害

 塩分は体調維持に欠かせない成分だが、過剰摂取は中毒を引き起こす。専門家によると、致死量は体重1キロあたり数グラムとされ、1歳児の場合は小さじ1杯でも命に危険が生じる可能性があるという。

 「緑園こどもクリニック」(横浜市泉区)の山中龍宏院長は「いくら子どもでも、多量の塩分を含むものを自ら進んで口にすることは考えにくい」と指摘。「塩分の過剰摂取は、細胞にダメージを与え、腎臓や脳にも障害が出る。けいれんや嘔吐(おうと)、意識障害などの症状が表れるため、誤飲や中毒が疑われる場合は、すぐに医療機関で受診すべきだ」としている。

https://mainichi.jp/articles/20170712/k00/00m/040/092000c