海上自衛隊のP1哨戒機をニュージーランド(NZ)に輸出する計画が敗色濃厚となり、防衛装備品の輸出計画は連戦連敗の様相を呈している。輸出を主導するため、防衛省内局の装備グループや陸海空3自衛隊の装備取得部門、技術研究本部を統合した防衛省の外局として防衛装備庁が平成27年10月に発足したが、体制見直しが急務だ。

 装備庁が計画した本格的な装備品輸出では、英国向けのP1は受注を争った米海軍のP8哨戒機に、オーストラリア向けの海自潜水艦そうりゅう型はフランスにそれぞれ敗れている。海自の救難飛行艇US2のインドへの輸出交渉も暗礁に乗り上げた。これらの輸出計画は、輸入国側の求めに応じる「受け身」で受注競争に参加したことが共通している。装備庁が自ら主体的に取り組んだとはいいがたく、勝機の分析や売り込みが適切だったか疑問符がつく。

 P1の英国輸出計画では米英同盟を踏まえればP8に勝つためのハードルは高く、「P8の輸入価格を下げさせる条件闘争の当て馬として英国に利用された」(政府高官)との疑念さえ残る。そうりゅう型の豪州輸出は現地建造による雇用対策でフランスに出遅れたことが響き、US2のインド輸出でも雇用対策がネックとなった。

 装備庁には政治情勢も考慮した各国との安全保障協力や官民協力、交渉など幅広い分野で総合調整が期待されるが、現行の体制は疑問視される。装備品の研究開発だけを担った技術研究本部出身の技官が装備庁長官と防衛技監のトップ2を独占しているためで、政府高官は「総合調整を技官に主導させるのは無理だ」と指摘する。

 研究開発以外の経験に乏しい渡辺秀明長官は空回りも目立ち、先月、フランスで開かれた航空ショーに参加予定だった海自のP1が機体トラブルのため途中で参加を取りやめたことはその象徴だ。渡辺氏は運用面から難色を示した海自に「アピールのため」とP1派遣を迫り、機体トラブルも招いたことで批判が強まっている。

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海上自衛隊の厚木航空基地に配備されたP1哨戒機=平成25年3月29日、神奈川県綾瀬市