「バリアフリー」のインフレに歯止めをかけよう

http://agora-web.jp/archives/2026934.html

乙武さんの記事は事実誤認だ。バニラ・エアの対応は違法ではない。
障害者差別解消法第8条は、抽象的な訓示規定で、ストレッチャーを
用意することが「合理的な配慮」にあたるというのは乙武さんの解釈
にすぎない。合理的か否かの基準は、法令で義務づけられているかど
うかで客観的に決めるべきだ。

バリアフリー法では、客席数が60以上の航空機における機内用車椅子の
設置が義務づけられているが、乗降の際のストレッチャーなどの設置義
務はない。
空港にも車椅子に対応する設備が義務づけられているが、これは航空
会社の義務ではない。したがってバニラ・エアがストレッチャーを用
意しなかったことは違法ではない。

乙武さんも「バニラ・エアを選ばず、別の航空会社を利用するという方
法もあった」ことを認めるが、「それではバニラ・エアが違法状態であり
企業として無自覚の差別を行なっていることを放置し続けることとなる」
と書いている。つまり彼らが「差別者」だと考える航空会社に社会的制裁
を加えるために、故意に連絡しないで騒ぎを起こしたのだ。

彼のような「当たり屋」が騒ぎを起こすと、バニラ・エアのようなLCC
も障害者用の設備や人員を用意しなければならない。外資系航空会社OB
によると、そういう機材を1台チャーターするのには1万円ぐらいかかる。
バニラ・エアの関空=奄美便の料金は4780円である。これでは「格安航
空会社」は成り立たない。

乙武さんも銀座のレストランを名指しで批判した事件を謝罪しているが
こういう当たり屋が来たら、全国の階段で上がるレストランがアウトだ。
車椅子用エレベーターをつけるコストは、他の客が負担する。これは「ゼ
ロリスク」と同じく、少数派が多数派にただ乗りするモラル・ハザードである。

こういう場合に大事なのは、「合理的な配慮」などの基準を法令で明確
に決めることだ。それを「思いやりがないのは違法だ」というように拡
大解釈すると、日本中に無駄な障害者用設備があふれ、そのコストは利
用者や納税者が負担することになる。