平成最後の終戦記念日、靖国神社(東京・九段北)には安倍晋三首相はじめ現役閣僚の姿はなく、
中国や韓国も一頃ほど神経をとがらせなくなった。
しかし、その落ち着きの裏で、靖国神社は“爆弾”を抱えていた。
来年、天皇の「代替わり」と創立150年が重なる大きな節目を目前に、前代未聞の問題発言が神社トップである宮司から飛び出したのだ。

◆「そう思わん?」「わかるか?」

 靖国神社では今、来年の創立150年に向け、境内のいたるところで改修工事が行なわれている。
だが、その内部では、修復不可能なほどの“綻び”が生じていた。

 6月20日、靖国神社の社務所会議室で行なわれた「第1回教学研究委員会定例会議」で、その重大事は起きた。
今年3月に第十二代靖国神社宮司に就任した小堀邦夫氏(68)が、創立150年に向けて新たに組織したのが「教学研究委員会」だった。
これからの靖国神社がどうあるべきかを考えるとして、第1回の会議には、
小堀宮司以下、ナンバー2である権宮司など職員10人が出席したことが当日の議事録に残されている。

 その会議の場で、靖国神社のトップである小堀宮司から、驚くべき発言が飛び出した。

「陛下が一生懸命、慰霊の旅をすればするほど靖国神社は遠ざかっていくんだよ。そう思わん? 
どこを慰霊の旅で訪れようが、そこには御霊はないだろう? 遺骨はあっても。違う? 
そういうことを真剣に議論し、結論をもち、発表をすることが重要やと言ってるの。
はっきり言えば、今上陛下は靖国神社を潰そうとしてるんだよ。わかるか?」

 さらに発言は、代替わりで次の天皇となる皇太子夫妻にも向けられた。

「あと半年すればわかるよ。もし、御在位中に一度も親拝(天皇が参拝すること)なさらなかったら、
今の皇太子さんが新帝に就かれて参拝されるか? 新しく皇后になる彼女は神社神道大嫌いだよ。来るか?」

 静まり返る会議室で小堀宮司の高圧的な口調の“独演”と、速記のキーボードを打つ音だけが響く──。

 この会議は、小堀宮司の意向もあって複数の出席者が記録のために録音していた。
宮司の「総括」から始まる110分に及ぶ音声データを本誌は入手した。

 小堀宮司が語気を強めたのは、今上天皇が即位以来、一度も靖国を参拝したことがない一方、
かつての戦地を訪れ、戦没者の霊を慰める旅を続けてきたことを指しているとみられる。
皇室ジャーナリストの久能靖氏はこう言う。

「今上天皇が靖国を参拝されない理由はわかりません。が、あえて推察すれば、
昭和天皇が1978年のA級戦犯合祀以来、靖国においでにならなくなった、その思いを咀嚼されたのではないかと考えられます。
今上陛下は戦争体験をお持ちで、戦中の国民の苦しみは直接ご存じでした。
だからこそ、国内外にわたるすべての戦地で慰霊を行ないたいというお気持ちになられていたと思います。
陛下の慰霊の旅は、強い信念に基づいて行なわれているものでしょう」

 その慰霊の旅が、小堀宮司の目には靖国神社を否定する行為に映っていると、靖国神社関係者が言う。

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https://www.news-postseven.com/archives/20180930_771685.html