福岡県筑紫野市のサーキット場が都市計画法で義務付けられた開発許可を得ないままオープンし、約40年間も
営業を続けていることが分かった。出入り口につながる市道の幅が狭く、本来なら許可基準を満たさないため、
県は2008年、地権者と経営者にいったん是正するよう指導したものの改善されないまま事実上、9年間放置
していた。県は「引き継ぎが不十分だった」と釈明し、あらためて10日、地権者と経営者に是正を求めた。

 サーキット場は九州自動車道基山パーキングエリア(PA)の北西にあり、敷地は約1万2千平方メートル。
田んぼや池だった一帯の土地について、1976年に経営者が地権者(いずれも当時)と借地契約を締結して
いるものの、県によると開発や開業の時期は不明という。ただ都市計画法の改正(75年施行)により、1万
平方メートル以上のサーキット場は開発許可が必要だった。

 市民からの通報で問題を把握した県は2008年に現地を調査。サーキット場に接続する市道の幅が開発許可
基準の6メートルに満たないことが判明したため違反と認定、現在の所有者と経営者に是正指導を行った。
市道の拡幅は現実的に困難なことから、(1)開発許可が不要となる広さに敷地を縮小する(2)廃業する−
などの選択肢を示した上で、地権者と経営者の連名による改善計画書の提出を求めた。

 だがその後、経営者らは改善計画を立てないまま営業を継続。県も是正の進捗(しんちょく)状況を定期的に
把握していなかった。

 西日本新聞の取材に対し、県は「なぜか違反処理の引き継ぎ案件に資料が入っていなかった」(都市計画課)と
釈明。10日、9年間も連絡しなかったことを地権者と経営者に謝罪し、あらためて改善計画を立てるよう指導した。
同課は「あくまで是正が目的なので、粘り強く指導を続ける」としている。地権者は取材に「親世代の開発なので、
なぜ許可を得ていないのか分からない」、経営者は「県と相談して対応を考えたい」と語った。

 経営者によるとサーキット場は近年、年間2500人前後の利用客があり、売り上げは同約2500万円。

【ワードBOX】開発許可

 都市計画法に基づき、無秩序な開発に伴う交通渋滞などを発生させないため、開発行為をする場合は都道府県知事や
政令市長の許可を受けなければならない。施工主や請負業者、地権者が申請する。一定規模の建築物やゴルフコース
などを整備する際には、接続道路の道幅の確保や、雨水をためる調整池などの整備などが求められる。許可を得ない
ままの開発が判明した場合、許可権者は改築や移転など、是正に必要な措置を命じることができる。

https://www.nishinippon.co.jp/nnp/national/article/320789