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沖縄の大学院「東大超え」論文実績のなぜ――領域の垣根を崩す研究環境
https://news.yahoo.co.jp/feature/1588

沖縄県恩納村にある、OISTの学生寮。ムスタフィナさんは、分子生物学を専攻する博士課程5年だ。ムスタフィナさんは当初、
米国や欧州の大学院進学を考えていた。

「欧米の大学院では、自国や地元エリア出身の学生には学費が全額支給されるプログラムがあるのに、私のような他国の学生
は対象外でした。そんなときにOISTの存在を知り、進学を決めたんです」

OISTは学生が研究に専念できるよう、学費が無料のうえ、生活費として年額約240万円をリサーチ・アシスタントシップとして
すべての学生に支給している。彼女のような海外からの留学生はOISTでは「主流」だ。全学生205人(2019年9月時点)のうち、
外国出身者は8割を超え、出身地は世界48カ国・地域を数える。教員も6割が外国人だ。

学校区分では私立大学に当たるOISTだが、運営資金のほぼ全てを日本政府が拠出する。沖縄振興予算のうち毎年約200億円
ほどが割り当てられており、開学に向けた動きが本格化した05年からの累計は1990億円に上る。

通常、私立大学は運営経費の2分の1以内でしか日本政府から補助を受けることができない。しかしOISTは「特別な学校法人」
という位置づけでその範囲を超える補助が受けられるため、政府資金だけで運営することが可能だ。同様のルールが適用され
ているのは、他に放送大学しかない。

研究資金のあり方にも特長がある。

ピーター・グルース学長は「OISTでは5年間、教員に対し安定的に資金を提供しており、ハイリスクな研究も可能です」と説明する。

グルース学長は、33人のノーベル賞受賞者を出したドイツの著名な研究機関、マックス・プランク学術振興協会(MPS)で会長を
務めるなど、最先端の研究環境を知る人物だ。

「日本の大学では、日本学術振興会(JSPS)のような競争的資金を狙いがちです。競争的資金の場合、他の研究者が評価しや
すい内容であることが優先され、結果的にメインストリームの研究しか採択されません。化学や物理学などの分野のノーベル賞
受賞者数で、MPSは日本を上回っています。高いリスクを取って研究することが、いかに世界的に重要であるかを示す一例です
よね」

日本の研究力は退潮傾向が続いている。

毎日新聞社の科学技術記者として国内外のさまざまな研究現場を長年取材し、現在は早稲田大学で教授を務める瀬川至朗氏
は、こう指摘する。

「04年の国立大学法人化が元凶ですよ。これによって日本の各大学は運営費交付金が毎年減り続けています。あとは自分たち
で外部資金を獲得しなくてはなりません」

17年度にOISTが獲得した外部資金は、全予算の6%に過ぎない。これは国内の大学と比べてもかなり低い水準だ。たとえば、
北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)は29%、東京大学は35%、東京工業大学は50%の予算を外部資金から得ている。