6/10
防衛費「対GDP比2%」なら世界3位の軍事大国へ 増額しても「自衛隊の規模拡大はほぼ不可能」と専門家
https://dot.asahi.com/aera/2022060800042.html?page=1
 自衛隊は隊員の募集に苦労し、今でも大きな定員割れになっている。防衛省設置法では人員24万7154人だが、21年3月末の現員は23万2509人で、1万4645人の欠員となっている。

 特に海上自衛隊は法的定員4万5329人に対し、現員は4万3419人で1910人の定員割れだ。艦艇の乗組員は持ち場が決まっているから、乗員が不足のまま出港するのは危険を伴うこともある。
 このため従来の2千トン級の護衛艦の定員は120人だったが、その後継の3900トンの護衛艦は定員を90人にする省人化で設計された。

 今後も人員はさほど増やせないから、現在の防衛予算の42%を占める人件費・糧食費は急増しそうにない。増額される防衛予算約5兆円の大部分は装備費、研究開発費に回りそうだ。これは4千億円の原子力潜水艦を毎年12隻建造できるほどの額となる。(軍事ジャーナリスト・田岡俊次)

6/11
防衛費の増額は本当に必要か? 「巨費を投じても効果は乏しい」専門家は否定的
https://dot.asahi.com/aera/2022060900031.html?page=1
 防衛省はステルス戦闘機F35を147機購入する計画だ。陸上基地用のF35A(1機約100億円)が105機、空母用のF35B(同約140億円)を42機購入するが、米国側が契約後に値上げすることもあり、円安も手伝って、より高価になりそうだ。
 旧式化しつつある戦闘機を新鋭機に入れかえるのは当然であっても、ミサイル攻撃に対し「敵基地攻撃」や「反撃能力」で対処しようとし攻撃用の各種のミサイルの購入や開発に巨費を投じても効果は乏しい。山岳地帯のトンネルに潜み、自走発射機で移動するミサイルを秒速7.9キロで1日1回世界各地の上空を通過する偵察衛星で撮影するのは極めて困難。高度3万6千キロで周回する静止衛星からはミサイルのような小さな物は映らない。無人偵察機を上空で旋回させれば対空ミサイルで撃墜される。
 相手が先にミサイルを発射すればその首都など固定目標に反撃することは可能だが、首脳部の現在位置はわからない。核ミサイルに対し火薬弾道ミサイルで報復するのは、大砲に対し拳銃で応戦するような形となる。米軍の核兵器を日本に配備する「核共同保有」を唱える人もいるが、核兵器使用のカギは米軍が握り、自衛隊は運搬役となる。米国がもし核使用に踏み切るなら自分の航空機やミサイルでそれを使うだろう。他方、核戦争にエスカレートして米国が標的になることを恐れ、核を使わないなら、自衛隊にそれを渡して使わせることは考えにくい。
 ロシアのウクライナ侵攻に恐怖感を持ち、「北の守りの強化」を言う人もいるが、ウクライナで苦戦するロシア軍が二正面作戦をする公算はゼロだ。ロシアの東部軍管区はシベリア中央部バイカル湖から日本海岸まで、日本の20倍に近い700万平方キロを担当しているが、兵員は8万人で自衛隊の3分の1。その一部はウクライナ戦線に投入されている。弱みを見せないよう、日本海で演習をして見せている。
 中国がロシアの愚行をまねて台湾を攻撃することも起きそうにない。中国の輸入相手の第1位は台湾で半導体の供給を依存し、台湾の輸出の44%は大陸向け、台湾の海外投資の6割以上は大陸にあると言われ、台湾人約100万人が中国で経営者、技術者などとして勤務している。中台の経済関係は一体化し、中国が台湾に攻め込めば自分の足を打つ結果になる。